长期入院すると一番困るのが亲しくなった患者が退院する事だ。二度も高校に休学届を出した矢木には亲しい友人はいなかった。いなかったよりも出来なかったと言った方が正解だった。その代わり入院した先の患者が友人の代わりだった。退院患者に取っては嬉しい出来事だが残る患者に取っては寂しい日でもある。でも数日后には、また新しい患者が入ってくる。そして亲しくなる。
その一人の横田さんも今周末の金曜日に退院する事になった。月曜日の総回诊の时に决まったらしい。右腕の手术をしてギプスを巻いている。右手だけ使えないが、日常生活には支障がないらしい。事実、何の治疗もしていない。毎日が検温して寝るだけで一日を过ごすと言う生活だった。
「矢木さん、头が痒くない」
と言ったのは看护学生の古村さんだった。
「头はフケが落ちて痒いですよ」
「午后から久し振りに头の洗髪はどう」
「ちょうど二周间前に洗ったきりで、フケも出て変な臭いもします。汗の臭いもします」
「それなら洗髪机が空いているので、お汤を入れて病室に来るので暂く待って贳ってもいい」
と言って、古村さんは仓库に行き洗髪机を出してくるとお汤を入れて病室に持って行く准备をした。同僚の羽根さんもバケツや雑巾の准备と患者が使うシャンプーやバスタオルを荷物から出して备えた。すると二人で洗髪机を押して病室に入ると矢木のベッドの后部横に据えた。
「矢木さん、身体の向きを変えられるかな。出来なかったら手伝うから」
と羽根さんが言うとベッド横に行った。
「今の状态なら右足だけを持ってもらわないと出来ないですよ」
と矢木が二人に言うと羽根さんは右足を持って动かそうとしていた。
すると羽根さんは矢木の右足を抱えると身体を平行移动するように头と足を逆にした。同时に右足の下には枕を置いた。それから二人の看护学生によって矢木の洗髪を始めた。
「今から始めるから背中が濡れないようにしますから」
と羽根さんが言うと首の当たりのベッドに濡れてもいいようにタオルを置いた。
「お汤を挂けるけど热くはない」
と古村さんが闻いた。
「久し振りに洗うので気持ちが良いです」
「何处か、痒くはないですか」
「何处も痒くて强く头を洗って下さい」
「それなら何处も彼处も洗いますから、痒い场所が有ったら知らせて下さい」
矢木は気持ち良さそうに寝ていた。それは、昔、お风吕の中で母亲に抱かれて洗われたような感じがした。再び古村さんが闻いた。
「何处か痒くないですか」
すると廊下を歩いていた横田さんが部屋を覗いた。
「矢木さん、若い二人に洗ってもらうと気持ちがいいだろう」
と头を洗っている矢木に声を挂けた。
「気持ちが良いけど、やっぱり寂しくなります。明日、いよいよ退院ですね」
うつ伏せになって寝ている矢木は横田さんに向けて言った
「俺なんて二周间で退院すると思っていたら、一カ月も入院していたんだ。早く外の空気を吸いたい」
「でも今の状态なら仕事をしても无理でしょう。利き手の右手が使えないから」
「使えなくても家にいるほうがゆっくり出来る」
「それはそうだけど」
「それに病院の空気より外の空気が美味しいもな。ね、そうだろ。学生さん」
「でも入院している人は、したくて入院していないのよ」
と羽根さんは手を动かしながら话していた。
「矢木さん、头、は痒くない」
「何处も痒くはないよ」
「ところで矢木さんは何人兄弟なの」
「下に妹がいるだけ」
「妹さんがいたの」
「矢木さん、用事があるからこれで会えないかもしれないけど早く退院してな」
と横田さんは言って、そのまま歩いていた。
「これから濯ぐからね。目をつぶってね」
と古村さんが何度もお汤を挂けて洗った。
それが终わるとタオルで头を何度も拭くと、羽根さんが借りて来たドライヤーで髪の毛を干かした。
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