がちかすぎてドキドキしてしまう。
「そ、それはいいですが・・・」
「新八や左之のまえでは、強がりいったがな。あいつらに、むだに案じさせたり負担をかけさせたくなかったからな。おれだって、まだあきらめたわけじゃねぇ。正直、かっちゃんの覚悟やら信念なんざ、おれにはどうだっていい。そういったものは、生きてりゃいくらでも貫きとおせる。肺腺癌第三期 死ぬ覚悟?散りたいと思ってる?かようなこと、立派なもんか。逆に、勇気がねぇから、無責任だから、そんな情けねぇ考えにおよぶんだ。おれは、許さねぇ。かっちゃんを、死なせたくねぇ。卑怯者にしたくねぇんだよ」
をくっつけたまま、副長は思いのたけをぶつけてくる。
副長も、自分自身で荒っぽすぎるし無茶ぶりいってることはわかっている。
つまり、なりふりかまわず助けたい、ということだ。
それに反対するわけはない。すぐさま、語る。
流山の新撰組の陣屋を囲んだのは、水戸藩出身の勤皇志士の東山道鎮撫総督の大軍監として、北関東方面を鎮撫を受けもっている。宇都宮方面に向かう途中、怪しげな賊徒がいるということで、流山にやってくるのである。その香川の下に、小軍監である薩摩のがおり、かれが局長を出頭させるにいたるという。そして、大久保大和を近藤勇であると見破り、主張するのが、おねぇ派の元御陵衛士であるである。
局長を出頭させた香川らは宇都宮へ向かい、局長は江戸へ護送、拘留される。
ちなみに、近藤勇の処分を巡り、有馬は最後まで武士としてのまっとうな処遇を主張したという。
斬首を主張するのは、土佐の谷干城 《たにたてき》である。かれは、坂本龍馬と親交があった。新撰組が坂本と中岡を暗殺したと、信じているのかもしれない。だとすれば、私情もいいところであろう。
「谷は、いつ死ぬ?」
尋ねられ、思わず息を呑んでしまう。
副長のの奥にたゆたっている光・・・。それは、この薄暗い納戸のうちにあって、ちがう意味での暗さを、いや、闇をかたどっている。
「このあと、元号は明治というものになります。四十五年つづきます。谷は、その明治期のほとんどをすごし、七十代なかばで死にます。しかも、かれは土佐派の一人として、板垣同様明治期に活躍します」
をよせる。
「まさか、暗殺なんて考えてませんよね、副長?」
「わかりやすいおまえによまれるたぁ、おれも落ちたもんだ。それは兎も角、殺っちまえば、あとはかっちゃんの処遇に寛容な連中ばかりなんだろう?」
「そういう単純なことではありません。主張したのは谷が中心であって、かれ一人ではありません。残念ながら、それ以上の情報は得ていませんので、ほかはだれが主張したのかはわかりません。いずれにしても、谷一人だけの主張が通るとは、考えられません。ゆえに、かれを殺ったところで、別の主張者がでてくるだけです。しかも、が殺ったとバレバレです。そうなれば、寛容な人たちも、斬首にかたむきかねない。それならば、かれを懐柔した方が効果的かと。もっとも、それも一つ間違えれば、ってところもありますが」
副長の眉間の皺が深くなる。思いつくまま、つづける。
「坂本と中岡が生きているということを、伝えてはどうでしょうか?もしも、谷に私情があるのなら、それで懐柔できるかもしれません」
副長の皺が、さらに深くなる。
副長のにたゆたう闇同様、納戸内に怖いほどの静寂がたゆたっている。
「それはできねぇ。わかってるだろう?坂本と中岡のことは、おれたちは墓場までもっていかにゃならねぇ」
たしかに。告げれば、かれらはまたを狙われることになるかもしれない。薩長や岩倉の掌の者が、というよりかは、フリーメイソンの掌の者に、追われることになるかもしれない。
ハードボイルド系歴史小説っぽい話になるが、あの組織はグローバルに展開している。坂本と中岡が、月か火星にいるのでないかぎり、みつけだして制裁を加えるだろう。
しかし、それもあくまでも推測。局長が助かり、谷自身の
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